お菓子の販売を始めたい!
という方からよくされる質問があります。
「お菓子の販売を始めたら開業届は出すべきですか?」
答えとして、明確に「出すべき!」「出さないべき!」とは言えません。
開業届を出すいろいろなメリットとデメリットを考えて判断してほしいとお伝えしております。
みなさんの場合はどうでしょうか?
本記事では、
出すことによって何が変わるのか?
ということを解説します。
そもそも開業届とは
開業届とは、「個人事業を開業した」ということを届け出る書類です。
届け先はシェアキッチンなどを借りている方の場合は、住民登録をしている場所の管轄の税務署になります。
開業届は本来、「事業を開始してから1ヶ月以内に出す」と決められているため、原則として販売を始めたら出すということが推奨されています。
開業届を出さないとどうなる?
実は、開業届を出さなかった場合の罰則はないのです。
そのため、実情は開業から1ヶ月で提出していない方も多くいると思われます。
開業届を出すメリット
それでは開業届を出すメリットを解説します。
具体的には
- 青色申告ができる
- 事業用の銀行口座開設やエアレジ登録ができる
- 覚悟が決まる
の3点です。
青色申告ができる
開業届を出すことによって得られる一番のメリットは、確定申告の際に「青色申告」で申告ができるようになるということでしょう。
そもそも確定申告とは?
会社員やアルバイトであれば、税金の申告は雇い主がやってくれますが、個人事業主になると自分で申告をすることになります。
これが「確定申告」です。
確定申告の流れは、ざっくり言うと
- 「その年の売上ーその年の経費=その年の利益」を算出する
- 利益に応じた税金額を申告し、税金を払う
という感じです。
自分で書類を作成し(最近はfreeeやMFクラウドなどを使っていると自動で作成してくれます)、税務署に持っていくか、e-taxで申請をします。
青色申告とは?
確定申告は、「白色申告」と「青色申告」の2パターンの申告の方法があります。
青色申告の大きなメリットは、「最大65万円の控除」です。
算出した「その年の利益」に応じた税金(所得税)を支払いますが、青色申告だと「その年の利益」から65万円を引いた金額が税金支払の対象になるのです。
具体的にいうと、
その年の利益が100万円だった場合
「白色申告」→100万円に対する税金を支払う
「青色申告」→35万円に対する税金を支払う
といった具合です。
65万円の控除は事業を始めたばかりの者にとっては大きいです。
65万円も利益がない!という場合は利益自体が0円になるので、税金を支払う必要がなくなります。
さらに、青色申告で赤字だった場合、その赤字を繰り越して来年の黒字分から差し引くこともできます。
これも具体的に表すと、
今年の利益はなく、30万円の赤字だった場合
来年の利益が100万円出たとしても、昨年の赤字分を引いた70万円に対する税金を納付すればOK
となります。
さらに65万円の控除は翌年もあるので、70万円から65万円を引いた5万円が翌年の利益としてカウントされます。
青色申告をする場合の条件
開業届さえ出していれば青色申告ができるのではなく、青色申告には別途申請が必要です。
大抵は税務署に開業届を出しに行ったときに同時に申請することができます。
開業届を出したタイミングで申請していない場合は、開業届を出して2ヶ月以内にするようにしましょう。
ただしこんな場合は注意
青色申告ができる、というのはあくまで「確定申告をする際」のメリットです。
つまり、確定申告をする必要がない人にとってはメリットにならないということです。
確定申告をする必要がないのは下記のような場合です。
- 収入金額の合計額から、所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く。) を差し引いた金額が150万円以下
- 各種の所得金額の合計額が20万円以下の場合
①②を満たす場合は、確定申告をする必要がありません。
事業用の銀行口座開設やエアレジ登録ができる
2つ目のメリットは「事業用」の口座やアカウントが作れるようになるということ。
例えば
- 銀行口座が屋号(店名)+名前で作れるようになる
- 事業用のPayPayアカウントが作れる
- エアレジやSquareに登録できる(会計用の端末が手に入る)
などがあります。
これらは申請する際に「開業届の写し」を提出する必要があるため、開業届を出していないと作ることができないのです。
屋号付きの銀行口座があると事業用と個人の口座を分けることができますし、確定申告にむけての記録もしやすくなります。
PayPayやエアレジなど、マルシェで販売するならぜひ持っておきたいアイテムも、開業届がないと作れないのです。
キャッシュレスがどんどん台頭しているなかで、現金対応しかできないお店を続けていくのはなかなか厳しいものがあります。
お店を続けていくんだ!という思いがある方は、「覚悟」を社会に証明する手段として開業届を出すのがおすすめですね。
それによって得られる「信用」によって、事業用のサービスを使う権利を得ることができるのです。
覚悟が決まる
メリットの最後ですが、これは私の経験からくる精神論です。
私は2017年3月に「やるぞ」と決めた時、利益もないのに開業届を出しました。
今思えば、そのタイミングで出さなくてもよかったのでは?と思うこともあります。
しかし、個人的にはその日が転機になり、
「開業届を出したから後に引けない!頑張るしかない!」と思えるようになりました。
それまでの「いつでもやめられる」「これはただの趣味」という言い訳がきかなくなったことで、「これを仕事としてやっていく」という覚悟ができました。
出しておいてよかったなと思っています。
開業届を出すデメリット
続いて開業届を出すデメリットを解説します。
具体的には
- 失業給付を受けられなくなる
- 扶養に入れなくなる場合がある
- 創業期限定の融資やサービスをその時期に使わないと損する
ということです。
失業給付を受けられなくなる
もとの仕事をやめてお菓子屋さんをやろう!と思っている方の場合、よくぶつかる悩みはここかもしれません。
失業保険とは、そもそも「今後就職する意思はあるけれど、現在は失業している」という状況の方に向けて支給される保険です。
それに対して「開業届を出す」ということは、「今後就職する意思はなく、自分でやっていきます」という表明とも取れる行為です。
そのため、
開業届を出す=失業保険がもらえなくなる
ということになるのです。
その状態で失業保険をもらっていると不正受給ですので注意が必要です。
扶養に入れなくなる場合がある
結婚されている場合は、扶養についても考える必要があります。
配偶者の扶養に入っている場合は、配偶者の会社の健康保険組合の規定を確認しましょう。
この条件は配偶者の会社によって異なることが多いのですが、
「開業すると扶養から外れる」パターン
「ある一定の収入があると扶養から外れる」パターン
などがあります。
扶養から外れると支払う保険額が増加する可能性があるので、注意しましょう。
創業期限定の融資やサービスをその時期に使わないと損する
これは再び私の個人的な経験ですが、私は2017年3月に個人事業主として開業届を出し、2022年1月に法人成りをして会社設立をしました。
そのときやっと気づいたことなのですが、創業融資はもらうときに「創業から2年以内」「創業から5年以内」といった縛りがあります。
「創業」とは会社にしたときではなく開業届を出したとき(私の場合は2017年)なので、2年以内というのには適応されず少し後悔しました。
「個人事業主として開業届を出したときに知っておきたかった」という創業期しか使えないサービスをあとから知り、少し悔しい思いをしました。
開業届を出すタイミングで創業融資や創業に関わるサービスを調べておくといいでしょう。
開業届を出すタイミング まとめ
開業届を出すメリット・デメリットについてお伝えしました。
お菓子屋さんになることも、立派な開業であり、創業です。
自分の状況と照らし合わせて、開業届を出すかどうか、そのタイミングを検討してくださいね。