自分で作ったお菓子を販売したい!
そう思った時、きちんと法律で定められたルールに則って販売しなければなりません。
お菓子を販売するのであれば菓子製造業の許可が必要になってきますが、菓子製造業で作れるものは一体何なのでしょうか。
自分が販売したいお菓子が菓子製造業の範囲内なのか気になりますよね。
実は菓子製造業の範囲で何ができるのかは、保健所の判断によるところが大きいのです。
実際に保健所の方にお話しを伺うことができたので、具体例を交えて解説していきます。
今できないことも2021年6月頃からできるようになる可能性もあるとのことで、規制緩和についてもお伝えしたいと思います。
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菓子製造業とは?

食品を扱う営業を行うには食品衛生法施行令第35条で定められている34業種のうち、いずれかの許可を得なければなりません。
お菓子やパンについては「菓子製造業」の許可が必要となります。
菓子製造業…ケーキ、あめ、せんべいなど社会通念上菓子と認識されているものや、チューインガムを製造する営業やパン製造業などが含まれます。
厚生労働省
許可を取得するには知事が定めた施設や設備などの基準を満たし、営業所の所在地を所轄する保健所による確認が必要となります。


菓子製造業の営業許可でできること・できないこと

菓子製造業で作れるものは一体何なのでしょうか?
一言で「お菓子」と言ってもさまざまな種類があります。
現在私が製造の際に使っているキッチンを貸し出しているのですが、利用者さんの開業相談にのることもあり、このお菓子は菓子製造業でできる、できないということがわかってきました。
利用者さんが作るさまざまなお菓子をみて、初めてお菓子ってこんなに種類があったのかとか驚きました。
貸し出しているキッチンの利用規約には
- 菓子、パンの製造(「これは作れるのか?」の判断が難しいものについてはお手数ですが板橋区保健所にお問合せください)
としか書いていないのですが、これまでの相談の中から一例をご紹介します。

東京都板橋区の例
板橋区にある私の製造室に保健所の方が来てくださったときにお伺いした内容です。
後ほど詳しく説明しますが、地域によって異なる場合もありますので、参考程度にしていただければ幸いです。
焼き菓子
焼き菓子はもちろんOKです。
パン
パンもOKですが、焼きっぱなしになっているものに限定されます。
サンドイッチのように、惣菜にあたるものが中に入っているものは飲食業の許可がないといけません。
サンドイッチは現行の菓子製造業ではNGとなります。
生菓子・和菓子
生菓子や和菓子も「菓子」なのでOKです。
焼き菓子と違って賞味期限が短いため、レンタルキッチンで製造する場合はすぐに販売ができないので、食中毒への注意が必要です。

ジャム
ジャムは菓子製造業で作ることができます。
東京都は条例により「製菓材料製造業」という許可も存在していて、菓子製造業がない場合は「製菓材料製造業」を取ればジャムを作ることができます。
ジャムは製菓材料になるからですね。
菓子製造業があれば、その中に製菓材料製造業が含まれているという解釈になるので別途許可を取る必要はありません。
しかし東京都以外はこの条例がなく、ジャムに対する許可はかなり地域差があります。
瓶詰製造業の許可を取ってと言われるところもあれば、菓子製造業だけでOKなところ、なにも許可がいらないところもあるそうなので、保健所への確認が必要です。
アイス
アイス単体はアイスクリーム製造業が必要で、菓子製造業とは別物になります。
ただ、過去にメロンパンアイスは菓子製造業で作ってもいいと許可を出したことがあるそうです。
逆にビスケットアイスはアイスクリーム製造業になるんだとか。
メロンパンアイスはメロンパンが主体に見えるから菓子製造業になり、ビスケットアイスはアイスが主体でアイスにビスケット添えられてるからアイスクリーム製造業なんだそう。
どっちに振り分けられるかはアイスと見るか菓子と見るかで判断がわかれるところになります。
お菓子やパンでアイスを挟む場合は、どちらが主体なのか実物を確認して協議が必要とのことなので、必ず保健所に確認しましょう。
少しややこしい部分ですね。

お菓子を冷凍発送
昨今ではケーキを冷凍して販売しているところも多いですよね。
お菓子を「冷凍食品」として発送する場合は「冷凍業」が必要になります。
お菓子を発送するときだけ冷凍する場合は「冷凍流通品」または「凍結流通品」と呼ばれ、菓子製造業のみで問題ありません。
保健所によると、冷凍食品として販売したいかどうかで変わってくるそうです。
冷凍食品と成分表示に書きたければ冷凍業が必要で、輸送の時だけ冷凍する場合は成分表示の保存方法に「解凍してお召し上がりください」「解凍後○日以内にお召し上がりください」と記載すれば良いそうです。
「冷凍業」と「冷凍流通品」はどう解釈するかによるところがあるそうで、明確な違いは誰も答えられないのではと個人的に思います。
その他
こちらは実際に夢見キッチンの利用者さんからご相談を受けたことがある質問です。
食用バラのシュガーコーティングしたお菓子を販売したいです。コーティングする前に花びらを乾燥させる必要があるのですが、乾燥させるところから製造に当たりますか?
レアチーズケーキは乳製品製造業が必要ですか?
「チーズ」は乳製品製造業ですが「ケーキ」という化合物になった時点で菓子製造業です。
菓子製造業で作れるものは地域によって違うことも

ジャムの例であげたように、同じ許可を持っていても地域によって作れるものと作れないものがあるのが現状です。
さらにアイスや冷凍の例で説明したように、どう解釈するかによっても変わってきます。
全く同じものでも地域によって作れる、作れないというのは納得がいかない方もいるのではないでしょうか。
2021年6月に大幅な規制緩和の予定

保健所の方が私の製造室に来られた理由が、来年の6月に大幅な法改正があるということで、その話をしたいからということでした。
どうやら大きな規制緩和があるようで、やはりややこしいことが全国的に問題になってるそうです。
特に地域によって解釈が違うことが前々から問題視されていました。
それを全国で同じような解釈にして、平準化するのが規制緩和の一番の目的だそうです。
今後は菓子製造業で作れるものの範囲が、事業規模によって変わるようになりそうです。
工場のような規模だったら専門の許可をとってください、小規模なら菓子製造業の範囲内で作ってOKですよ、みたいな解釈が出てくるのですね。(※確定ではありません。)
お菓子を販売する前に、自分のお菓子が菓子製造業で作れるものなのか、ほかの許可が必要なものなのかをしかっりと保健所に確認してみましょう!
法律に則って正しくお菓子を販売してくださいね。
