お菓子の製造・販売をする上で、「自分の衛生管理は大丈夫かな?」と
不安になることはありませんか?
どうやったら安心して食べてもらえるんだろう?
衛生的な掃除の仕方は?
など、具体的な方法を学びたい方への疑問に答えるセミナーを、児童福祉施設・保育園での調理経験のある管理栄養士の宮下さんが開催されます。
夢見キッチンのフランチャイズ店でもあるヴィーガン&アレルギーフリーのシェアキッチン「blake」のオーナーでもある宮下さん。
今回は、独自に実施されている衛生管理セミナーについて、宮下さんにインタビューしてみました。
自分の衛生管理に不安がある方、もっとしっかり勉強してみたい!という方はぜひ、宮下さんの思いが詰まったセミナー受講を検討されてみてください。
シェアキッチンBlakeオーナー。管理栄養士。
児童福祉施設や保育園などで大量調理(給食作り)に携わった。
その経験を活かして、現場の衛生管理対策をシェアキッチンの利用に応用したオリジナルの衛生管理セミナーを主催。
食中毒や異物混入を防ぐ具体的な対策を提案している。
https://blake-sharekitchen.com/
https://www.instagram.com/blakefafree/
児童福祉施設・保育園・知的障害者のグループホームを経てアレルゲンフリーのお菓子屋さんへ
山本:今日はよろしくお願いします。最初に、宮下さんのこれまでの経歴を教えてください。
宮下:よろしくお願いします!私は大学で管理栄養士の資格を取得して、卒業後は児童福祉施設で3年半くらい給食を作っていました。
山本:大量調理の現場ですね。
宮下:名古屋市が運営している児童施設で、いろんなクラスがあり、一時保護所もあって、短期入所の子の施設もありました。そういった施設の給食を一括で作っていた感じです。
山本:一時保護所というとあまり馴染みのない方も多いと思いますが、どんな施設なんでしょうか?
宮下:一時保護所は、家庭の事情がある場合に保護者から一度子供を隔離するための施設です。
急に連れて来られたり、保護者から詳しい話が聞けなかったりして、薬の服用状況やアレルギーの有無もわからない状態の子供がほとんどでした。そういう子供には何を食べさせたらいいかわからないので、アレルゲン全除去の食事を作ります。
また、施設の中には発達障害の子供さんもいます。肢体不自由でものを飲み込む力が弱い子もいて、そういう子たちのためにはきざみ食や嚥下食やとろみ食も作っていました。
山本:すごい現場ですね。
宮下:そうですね、難聴の子、ダウン症の子、寝たきりに近い状態の子もいて、どちらかというと老人ホームのような食事の考え方だったかも知れません。
山本:最初の就職でいろんな子供さんの食事を作り、経験を積まれたんですね。その後は転職されたんですか?
宮下:東京の保育園の栄養士に転職しました。児童施設の時は外部の給食委託会社として派遣される形でしたが、次は施設に所属する栄養士になりたいと思ったのがきっかけです。そこで一年くらい勤めました。
山本:仕事の内容は変わりましたか?
宮下:全然違っていました。保護者は子供のアレルギーを把握しているし、アレルギーに詳しいクリニックの先生もいて、万全の体制で子供を迎えている感じでした。
それまで健常な発育状態の子供たちを見慣れていなかったので、大人やお友達とコミュニケーションがとれている子供たちを見るだけでも衝撃的でした。
そこで初めて「これが当たり前なんだ」と知ったくらい。
山本:当たり前に衝撃を受けるって不思議な感覚ですね。
宮下:はい。でも同時に、最初に働いていたような福祉施設の方が性に合っていると思う部分もあったんです。
そこで、18歳以上の知的障害を持った人のグループホームや日中作業所をやっている会社に転職しました。そこは食事は宅配だったので、宅配をお願いしている仕出し屋さんとのやりとりをしていました。もっとこういったメニューがほしいといった提案をしたり、利用者さんからのリクエストを伝えたり、発注業務をしたり。
後はレクリエーションとして、季節ごとのイベントで食べるお菓子を作る調理実習をやったり、歯磨きや手洗いの指導をやったりしていました。
山本:そこでは何年くらい働いていたんですか?
宮下:3年くらいです。でも、そこで適応障害を発症してしまって休職することになり、そのまま退職しました。
山本:それくらい激務だったんですね。
宮下:それから1〜2年経って、リハビリがてら何かやってみようと思ったときに、それまでも調理の仕事しかしてこなかったこともあって、お菓子を作って売ってみようと思ったんです。
そのときに、目の前にいる人がアレルギーを持っていたり、宗教上の制約があったりする可能性を考えて、特定原材料を除去したものを作ろうと決めました。
山本:それで、自分のお菓子屋さんを立ち上げたんですね。
宮下:そうです。今は、アレルゲンフリーとヴィーガン対応のお菓子屋さんをやっています。また、私と同じようにアレルゲンフリーのお菓子を作りたい方のためにシェアキッチンも運営しています。
シェアキッチン利用者の中でもある程度の衛生基準を共有できるようにセミナーを開始
山本:食品衛生のセミナーをやりたいと思ったきっかけはなんですか?
宮下:私も自分のキッチンを作る前は、シェアキッチンを利用していました。その際に、いろんな人がキッチンをシェアする上で、衛生管理や意識の高さを一定に保つのは難しいんだなと感じました。
シェアキッチンで知り合った人の話を聞いていると、食品衛生責任者の講習を受けても座学が中心で実際に何をしたらいいかわからない人が多いことにも気づきました。
私はずっと給食の提供をやってきたので、そこでの施設基準が当たり前になっていますが、そういった経験のない人も多い。なので、ある程度の衛生基準をシェアキッチンを使っている人が共有するのが大切なのではと思い始めました。
山本:わかります。シェアキッチンの利用者さんの衛生に対する意識って結構バラバラなんですよね。私も苦労しています。私は利用者さんの中にやはり大量調理の現場にいらっしゃった方がいて、アドバイスをいただいて最後の掃除についてのルールを決めました。
宮下:シェアキッチンのオーナーさんによっても考え方はバラバラですよね。
シェアキッチンを借りる立場だったときはオーナーさんに自分から提案することも難しい部分があったのですが、自分のキッチンを作ったときに、オーナーとしてちゃんとした衛生の基準を設けたいと思いました。
そこで、セミナーを作ることにしたんです。
山本:宮下さんのシェアキッチンを利用するには、セミナー受講がマストなんですよね?
宮下:そうですね。うちのキッチンの利用者さんはマストで、最初はキッチンに来てもらってセミナーを受けてもらっていました。
でも、他のキッチンを使っている人からもセミナーを受けたいという要望をいただくことがあり、今回オンラインで開講することにしました。
山本:私も大量調理の経験などはないので、自分の衛生管理に不安になったことはあります。いろいろ調べてみても実際にどうしているのかはわかりづらいので、経験を重ねた人からの指導はとてもありがたいですね。
大量調理の現場のノウハウをシェアキッチンのレベルに落とし込んだセミナー
山本:宮下さんのセミナーの特徴を教えてもらえますか?
宮下:大量調理の現場のノウハウをシェアキッチンのレベルに落とし込んだ具体的・実践的なものになっています。また、食中毒と異物混入対策をメインに学べるものになっています。
山本:食品製造の2大テーマですね。
宮下:手の洗い方など基本的なところから始まって、ハイター(次亜塩素酸)を薄めた液の使い方などもお話しします。
このタイミングでこういった作業をすることで前の作業のリスクをリセットできる、など具体的に説明していきます。
意味もわからずとりあえずやれって言われたからやる、ではなく、こういった意味があるからこれをやるんだという説明をしっかりするので、迷ったときの判断基準も明確になるかと思います。
山本:とてもありがたいセミナーですね。特定原材料(アレルゲン)を除去しているキッチンならではの部分はありますか?
宮下:アレルゲンのコンタミネーション(混入)については、私のシェアキッチンはキッチン自体が特定原材料の持ち込み禁止になっているのでセミナーで触れることはありません。
ただ、使用した場所をリセットするための作業後の掃除の仕方などは、他のシェアキッチンでもコンタミネーションを防ぐ方法としては有効かと思います。
コンタミネーションを防ぐには、一番は自分だけの器具を持ち込んで、器具も含めてアレルゲンの混入対策をするのがいいと思いますが、シェアキッチンだとなかなか難しいですよね。
その場合にはどうするべきかなどを説明しています。
私自身、シェアキッチンを利用していたときに自分のお菓子にアレルゲン物質が入らないようにと思ってやっていたことがベースになっています。
衛生管理を考えることは自分のお客さんを思うこと。それぞれの環境に合わせた選択を
山本:今聞いただけでも食品衛生はかなり奥が深いですね。
宮下:そうですね。今紹介しているセミナーはベーシックコースという位置付けです。
お菓子の販売をやってみようという人が、キッチンの規模に関わらず共通で使える知識をまとめています。
100%問題ないというのは難しいですが、最低限これをやっていれば大丈夫なはず!という内容になっています。
例えば煮沸消毒・アルコール消毒など様々な衛生管理の方法がありますが、それぞれのメリット・デメリットを説明してその人がお菓子を作る環境に合わせて取捨選択をしてもらえるようにと思っています。
質問にも全部答えますし、私が提供できる選択肢を全部提供して、その中で自分はどこまでできるか、やりたいか、を考えて決めてくださいというのが私が提示しているセミナーのゴールです。
山本:確かに環境によってできること・できないことがありますよね。
宮下:もっとより具体的に「自分が使っている設備」「自分の商品」だったらどうするべきなのか?ということを知りたいという方にはもう一段階上のセミナーも予定しています。
これは、個別コンサルに近い形になりますね。
山本:セミナーを受講される方に伝えておきたいことはありますか?
宮下:先ほどもお話ししましたが、100%大丈夫というのはやはり難しいので、最終的には自分で選択できるようになってほしいと思っています。
衛生管理の方法を考えることは、自分のお客さんのことを考えることにもなります。
人に言われたからこうする、というのではなく自分で責任を持って製造できるようになるためのサポートをしたくてセミナーをやっているので、受け身でというよりは主体性を持って、製造者としての当事者意識を持って製造に取り組めるようになってほしいなと思います。
セミナー受講は受け身になりがちですが、人の口に入るものを作るという意識で受講してもらえたらと思っています。
夢見キッチンのフランチャイズとしてオープンしたシェアキッチンBlake
山本:宮下さんのシェアキッチンBlakeは、夢見キッチンのフランチャイズ加盟店でもあるんですよね。
宮下:はい。元々私がシェアキッチンを探していて、いくつか見学に行っていたときに夢見キッチンも見学に行きました。上板橋のキッチンも一度利用させていただきましたが、住んでいるところから遠かったので利用を断念しました。
山本:シェアキッチンは距離があると使いづらいですよね。
宮下:でもその後、山本さんの「菓子製造業の営業許可を取得する講座」を受講することにしたんです。
私は自分のシェアキッチンを作りたいと思っていたので受講したのですが、その際に「夢見キッチンのフランチャイズを始めます」という話をされていたんですよね。
それで、「やってみたい」と。
山本:講座のときにすでに「やってみたい」という話をしてくれていましたよね。
宮下:その時はまだ今の物件も見つかっていなかったのですが、シェアキッチンをやりたいという思いはあったので手を挙げました。
山本:私もフランチャイズ始めようかな、と思っていて、一度講座受講されている方に話してみて反応を見ようという段階でした。
宮下:お互いに構想を練っている感じの時でしたね。
でも数ヶ月後、急に物件が決まって。それに合わせてフランチャイズの話も進めていただく感じになりました。
山本:
それが2022年末くらいの話でしたね。
そこから毎月面談をして、シェアキッチン運営について話したり策を練ったりしています。
宮下さんは、夢見キッチンオンラインコミュニティにも3期生として参加してくださいました。
特定原材料持ち込み禁止のキッチンを続けるのは必要としてくれる方がいるから
山本:実際に特定原材料持ち込み禁止のシェアキッチンを立ち上げてみて、どうですか?
宮下:実は利用したい方からの連絡はあまりなくて、こんなにないとは!?と思っています。
実際、アレルギーのある方や家族の方などの当事者でないとなかなか意識することはないですよね。
まして特定原材料8品目が全て使えないとなるとかなりハードルが高いのかなというのは自覚しています。
山本:卵、バター、小麦粉とかお菓子の基本になるものが全部使えないとなるとかなりハードルが高いですよね。
宮下:あと、卵が食べられない子供さんにも、その子が食べられる乳製品や小麦粉を食べさせてあげたいと思うことは当たり前ですよね。
なので、全除去はかなり難しいんだなという…よく考えたら当たり前のことなんですけど、それがシェアキッチンを始めて一番痛感していることだったりします。
山本:それでも、こういったシェアキッチンの需要はあると思います。
宮下:自分がアレルゲンフリーのお菓子を作っていて、マルシェに来てくれるお客さんで「これなら食べられるね」「このお店に来たくて来ました」と言ってくれる方もいるので、シェアキッチンとしてはあまり軌道に乗っていませんが、このままのコンセプトでいきたいと思っています。
衛生管理の指導など、他にもできることがあるので、自分としてはシェアキッチン以外の形でも菓子製造に関わる方のサポートができればと考えているところです。
Blake衛生管理セミナー受講を検討されている方に向けてのメッセージ
山本:最後に、セミナー受講を検討している人にメッセージをお願いいたします。
宮下:お菓子作りで不安なこと、大変なことはたくさんあると思いますが、衛生面や食中毒などで不安になったときはぜひ私を頼ってほしいです。
安心して安全なものを作れる人が増えたら私も嬉しいので、セミナーを通して不安を責任感と自信に変えるサポートが出来る存在になりたいと思います。
お菓子を作っていても衛生面に特化してしっかり説明できる人は珍しいかも知れません。
食品衛生責任者の講習だけではわからない部分があった方、食中毒の事例などを聞いてもっと不安になってしまった方もぜひ参加していただけたらと思います。
諦めずに、怖がらずに、お互いお菓子作りを続けていきましょう!