【夢見キッチンの人々#10】Wa kokoro 田中 沙智さん
夢見キッチンの利用者さんに今の活動などをインタビューする企画の第10弾!
今回は、初!「夢見キッチン宇部」のご利用者様へのインタビューです。米粉のクッキーを製造・販売されている「米粉のおやつ Wa kokoro ( 和こころ )」田中 沙智さんにお話をお伺いしました。
今後レンタルキッチンのご利用を検討されている方、ご自身でお店をやりたい夢のある方はぜひ参考にしてみてください。
愛知県出身。
子供の小麦アレルギーをきっかけに、小麦を使わないパンやお菓子の手作りを試みるようになる。
2021年より山口県宇部市へ移住。
「米粉のおやつ Wa kokoro ( 和こころ )」として2025年2月より店舗を持たないお菓子屋さんをスタート。
マルシェでの販売や、委託販売を中心に活動している。
*定期納品:BOSSTY CAFE
*不定期納品:宇部市中央町のジェラート屋「Gelateria Yawn」
宇部市万倉地区のコーヒー屋 「Maple Coffee Roastery」
JA山口新鮮館 宇部店
https://www.instagram.com/wa.kokoro_/
日本のお米から生まれた優しいおやつ「Wa kokoro」

山本:今日はよろしくお願いします!ちょうど私が宇部にいるタイミングだったので、田中さんのお菓子を委託販売している「BOSSTY CAFE」さんでお話を伺います。
田中:よろしくお願いします。
山本:まずは、お店の紹介をお願いします。
田中:店舗を持たずに委託販売・マルシェ中心で米粉のお菓子を作っています、「Wakokoro」と申します。
山本:お店の名前の由来を教えてください。
田中:日本のお米から生まれた優しいおやつをイメージしました。
漢字で書くと「和心」で、カフェなどに合わせた雰囲気で「Wa kokoro」という綴りにしました。
山本:声に出して読んでみると、和を感じますよね。
田中:はい。2年前(2024年)の10月に山本さんに初めてお会いして、翌年の2月からお菓子の製造・販売を開始しました。
山本:今は米粉のクッキー中心で作っていらっしゃいますよね?
田中:クッキーです。このクッキーを見たら「Wa kokoro」と思ってもらえるよう、定着するまではクッキーに絞って作ることにしました。キッチンの利用時間にも制限があるので、効率も考えています。
山本:絞っていますが、クッキーにはいろんな種類ありますよね。
田中:基本の粉は一緒なんですけど、型抜きの日、ブールドネージュの日、ショートブレッドの日などで製造する日を分けています。型抜きの日は型抜き用の粉にいろんなフレーバーを追加して、いろんな色にしたりしてバリエーションを作っています。型抜きクッキーは「BOSSTY CAFE」さんの納品用で作ることが多いですね。
山本:最近はショートブレッドなどもあるんですよね。
田中:ショートブレッドは豆乳バターを使うので、「豆乳バターの日」みたいな感じですね。
マルシェの販売があるときは色々な種類を作って、一部を他の委託先に置いてもらったりします。委託先によって「不定期で持ってきていいよ」と言ってくださっているところがあるので、そこに置かせていただくものはバラエティに富んだものになっています。
山本:うまく回ってますね。
田中:委託先がみなさん優しい人たちで、こちらも臨機応変にやらせていただいております。本当に恵まれています。
子供の小麦アレルギーを機に始まった試行錯誤

山本:どうしてお菓子の販売をされるようになったのかをお聞きしたいです。
田中:もともとお菓子作りやパン作りは好きでした。子供が生まれてからはやはり手作りがいいということで、さらに作るようになりました。その頃は小麦を使っていましたね。
山本:最初は小麦を使っていたんですね。
田中:はい。だけど、一番下の子が生まれた時に、卵と小麦のアレルギーだったんです。最初に食べさせたパンがゆで、一口で全身に蕁麻疹みたいなものが出て。
山本:それは焦りますね。
田中:これはいかんと。ただ、作るのは好きだったので、代わりになるものを探そうと試行錯誤するようになりました。
山本:それで米粉に?
田中:まだその時は米粉が全然浸透してなかったんですよね。私も知らなかったので、大豆粉やおからで作ったりしていたのですが、美味しくなくて。マクロビのレシピとかはあるんですが、うまくいかないんです。
山本:分かります!私も昔マクロビ流行っていた時に本を買って作ってみたことがあるのですが、作ったら本当に美味しくなくて。レシピ通りに作ってもうまくいかなくて封印しました。数年経って、低糖質スイーツの研究をし始めた時に思ったのは、今はレシピだけでなく材料が進化している。お菓子に使いやすい材料が、あの頃はなかったのかなと思いました。
田中:そうですよね。最近の米粉は水の吸収率が全然違うと思います。その頃、米粉を見つけて作ってみた時は餅が出来上がってしまったりしました(笑)
そんなことがあり、一回大豆粉やおからで作るのはやめて米と芋で育てることにしたんです。
山本:潔く!
田中:でも、子供が成長して自我が出ると、周りと同じものが食べたくなるんですよね。ごまかしがきかなくなるんです。米と芋だけじゃダメだとなって、また試行錯誤を始めました。
山本:「みんなと同じものが食べたい」って自然なことですよね。でも親としては悩ましいですね。
田中:そのころは岐阜に住んでいたんですが、名古屋に小麦を使っていないケーキ屋さんがあるのを聞いて2歳の誕生日にわざわざ買いに行きました。それを子供に食べさせた時に、やっぱり「ケーキである」ということが大事なんだなと思いました。自分では作れないものでしたし、必要だなと思いました。
山本:お子さん喜ばれたでしょうね。
田中:ネットで初めて米粉パンを購入したのですが、美味しくなかったりして。
保育園の一時預かりではアレルギーがある子供はおやつを持参しないといけないので、蒸しパン・クッキーなどを作っていました。
山本:試行錯誤されたんですね。
田中:米粉のパンケーキはよく作っていたのですが、数年かけて「おうちで食べるぶんには美味しい」ものがつくれるようになりました。
山本:コロナ禍に入るくらいのことですね。
田中:そうです。同時期に、友人の中で米粉のパンを作ってマルシェに出店するようになった人がいて。その友達に教えてもらうこともできるようになりました。
山本:それは心強いですね。
田中:私も最初はパンから始めて、お菓子も作るようになりました。最初は日常的に食べれるようなものを作りたかったんです。その後コロナ禍になって、オンラインレッスンやYouTubeを見たりしてさらに勉強して。友人に教えてもらうのも含めて、自分だけでは辿り着けなかったところまでわかるようになってきました。自分一人でやっている時は狭い範囲しか見れてなかったんだなと思いました。あと、その頃になったら粉もだいぶ使いやすいものになっていました。
山本:レッスンを受けたりすると全然違いましたか?
田中:違いましたね。独学でやっていた時は小麦のレシピを米粉に置き換えて作っていたのですが、それだけだと美味しくなくて。
レッスンを通して自分が気に入ったレシピに出会えて、基本レシピが固まっていって。自分流の配合を作っていけるようになってきました。そのくらいから、一気に変わりましたね。
それより少し前から子供も負荷試験を通して少しずつ小麦が食べれるようになっていたのですが、絶対的に治ることはないので外では好きなものを食べてもらって、家では米粉のものを食べたりといった感じになっていました。
山本:その時期に宇部に移住されたんですよね。販売しようと考え始めたのもその時期でしょうか?
田中:自分の配合がわかってくると販売したくなって、ぼんやりとビジョンが出てきました。いつかは…50歳までに販売できたらいいなと思うようになりました。
最初はパンを作りたいと思っていたのですが、シェアキッチンを利用するとパンは日持ちしないから難しいかなとか、地道に考え始めて。
山本:すでにシェアキッチンを利用して製造・販売をするというところまで考えていたんですね。
田中:はい。そうなんですが、実は宇部にきた時にはまだ宇部にシェアキッチンがなかったんです。岐阜にはあったので、あると思って移住してきたんですけど、なくて。「シェアキッチンがないからできないかも」と思いつつ3年くらい別で働きながら考えていました。おかげで商品イメージとかは固まっていきましたね。ちなみに名前もずっと前から決まっていました。妄想だけはかなり膨らんでいたんです(笑)
山本:夢見キッチン宇部ができたのは3年前なので、その頃はまだなかったですね。そんなに前からシェアキッチンを待っていてくださった方がいたなんで驚きです。
夢見キッチン宇部の説明会で一気に広がった販売の道

山本:実際に田中さんが夢見キッチン宇部に来てくださったのは、ちょうど2年くらい前でした。宇部のキッチンの利用を検討してくれてる人に説明会をやろうということになった時です。それまでも見学会自体は随時やっていたのですが、EN-bizの方の提案で、「見学会まで踏み出せない人もいると思うので、どんな風な使い道があるか?などの説明会をやってはどうか」と言っていただいてやることになりました。
田中:まさに夢見キッチン宇部の存在は知っていたのですが、見学会に参加する勇気は出なかったんです。次に進みたいけど進む勇気がなくて。なので、説明会は行きやすかったです。
山本:私としてはすでに見学会もやっていたので、本当に来てくれる人はいるのか?と半信半疑でしたが、3人の方が来てくださいました。今、Wa kokoroさんが委託販売されている宇部市中央町のジェラート屋さん「Gelateria Yawn」の方も来られていて、そこで出会われたんですよね。話しているうちに、「うちも米粉のお菓子を置きたいから、もし製造を始められたら委託販売したらどうですか」という提案もしてくださって。
田中:あの時はマルシェに出ることを考えていて、マルシェ自体に行くのが好きだったので出てみたい!という目的で行きました。岐阜から引っ越してきたので、横のつながりもなくて。マルシェに出たいというのは宇部と仲良くなりたい、友達を作るきっかけ探しみたいな面もありますね。でも、予想に反してその場で委託販売の話をいくつかいただくことになって驚きました。
山本:当時、まだ宇部ではイベントが少なくて、東京のように毎週どこかでマルシェをやっているような感じでもなかったので、シェアキッチンを利用される方の売り先を考えないと、と思っていました。その中で委託販売先を持つことの重要性を感じていたので、「BOSSTY CAFE」さんへの委託の話もさせていただきました。
田中:あの日の出会いで一気に広がっていって今があります。
山本:説明会は、夢見キッチン宇部ができて1年くらい経ってからやったのですが、それより前に知っていてくださったのでしょうか?
田中:実は、もっと前から検索していました。夢見キッチン宇部ができる前に、「シェアキッチン 宇部」とかで検索すると、「宇部出身」ということで山本さんのことがヒットしてたりしたんです。でも、見てみると東京にしかキッチンはなくて。「もしかして、宇部にシェアキッチンできないかな」と思ってその後も何度か調べたりして、ずっとアンテナを張ってたんです。
山本:そんな方がいてくださったことが驚きです。本当に最初は「誰か必要としてくれている人がいるんだろうか」という疑問を抱えながら始めたので。
田中:シェアキッチンを使うなら、とにかく宇部にあってほしいと思っていました。距離が結構大事で、家から近くであってほしいと。米粉を扱う以上、キッチンに道具があっても全部道具は持っていきたいという思いがあり、遠くのキッチンに行くのは考えてなかったんです。
山本:コンタミ(別の材料が混入してしまうこと)の問題がありますからね。
田中:その分、終わったら全部袋に入れて持って帰って洗うので、洗い物の時間がなくて、シェアキッチンの利用時間は短縮できるという側面もあるんですけど。とにかく、宇部に夢見キッチンができると聞いた時は嬉しかったです。できてからすぐには見学会に行けず、一年間はもじもじして過ごしてしまいましたけど(笑)
委託販売を中心に、一つ一つのつながりを大切に

山本:改めて、現在の活動内容について教えていただけますか?
田中:はい。先ほどお話ししたように最初はマルシェに出店したくて始めたのですが、実は、今は委託販売がメインなんです。マルシェはなかなか採算を取るのが難しく、宣伝も苦手なので、自分に合うスタイルを模索した結果こうなりました。
山本:マルシェはその日に売れる数の予想なども難しいですし、委託販売していると「ここに行けば商品がある」とお客様にも覚えていただきやすいのでいいですよね。
田中:今はとにかく一つ一つの委託先を大事にしたいと思っています。
山本:委託販売先は、
・BOSSTY CAFEさん
・宇部市中央町のジェラート屋「Gelateria Yawn」さん
・宇部市万倉地区のコーヒー屋 「Maple Coffee Roastery」さん
・JA山口新鮮館 宇部店さん
などですね。
田中:はい。あと、最近、奇跡的な出会いがありました。
たまたま自分が好きで使っていた、国産野菜100%でつくられている、三笠産業さんの野菜ファインパウダーがあったのですが、販売元の株式会社三笠産業さんは山口県の企業だったんです。野菜パウダーはクッキーの色付けに使っていました。普段、cottaや富澤商店で買っていたので全然知らなかったのですが…。
そんな三笠産業さんをたまたま米粉を通じて知り合った方にご紹介いただいたことがあって。そこからなんと、「この野菜パウダーを販売する時のサンプルのクッキーを作ってほしい」と相談を受けることになったんです。
山本:そんなことが!
田中:一度の受注数は少ないのですが、柔軟に対応できるのが個人の良さなのでお受けして、販売時に使っていただいてます。
山本:自分が好きなもののPRに使われるなんて光栄ですね。
田中:最近は野菜パウダーを使ったショートブレッドなんかも作り始めました。
山本:お子さんにも喜ばれそうですね。
田中:JA山口新鮮館 宇部店さんではその野菜パウダーを売っているんです。それもあって、新鮮館さん限定販売の野菜パウダーを使った商品のバリエーションを考え中です。
山本:私の母がWakokoroさんの商品のファンで、最近「新鮮館で見つけた」と喜んでLINEくれました(笑)そういった経緯で作られた野菜のショートブレッドだったんですね。
田中:そうなんです。他の活動としては、プチギフトなどで声をかけていただいて作ったりすることもありますね。今は、地に足をつけて自分なりに「これだ」という商品が見えてきたかなという時期です。
大きなことはできないけど、少しずつ広がるつながりを大事にしていきたいと思っています。自分のできる範囲で無理せず続けていきたいですね。
いつか運命の「山口県産米粉」に出会いたい!

山本:これからの目標を聞かせていただけますでしょうか?
田中:こだわりたいことはたくさんあって、本当は山口県産のお米から作った米粉を使いたいんです。今使っているレシピは山口に来る前からのレシピなので、今は山口県産の米粉の中でこのレシピに合うものを探しています!
山本:地のものを使うのは理想ですよね。
田中:焦ってやるよりはじっくり考えていきたいので、いつかは!出会いたいなと!
山本:いつかレシピと山口県産の米粉が合致する日が来ますね!楽しみですね。
田中:はい。今の楽しみの一つなんです。
山本:いつかはご自身の工房を持ちたいという展望もありますか?
田中:はい。いつか自分の工房も作りたいですが、今は現状を大事にしています。夢見キッチンさんがなければ何も始まっていないので、とても大切にしたい場所だと思っています。
山本:今の夢見キッチン宇部の利用者の中では一番利用頻度が高いのがWakokoroさんかもしれませんね。そう言っていただけてとても嬉しいです。
今のつながりを大切にしていけば、いつか流れがきて「今なら、この物件ならやれるかも」といった形で工房を作れるかもしれませんね。
これから始める方へのメッセージ:とにかく周りに聞くことが大事!

山本:最後に、これからお菓子の製造・販売を始めてみたいという方にメッセージをお願いできますか?
田中:「とりあえずやってみる!」というのが大事ですよね。あと、私が感じたのは、とにかく「聞くこと」です。自分一人で考えずに、周りに聞いてみる。
山本:視野を広く持つ、ということでしょうか?
田中:周りにやってもらってばっかりではダメですが、アドバイスをいただくことで見えなかったものが見えるのが大きいです。
山本:一人でやっているとどうしても自分の思いが先行して、人の意見が聞けなくなってしまうこともありますよね。確かに、「周りに聞ける人である」ということは大事ですね。
田中:私自身も、どんどん聞いていきたいと思っています。これからもいろんな人に会いたいです!そういう意味では。マルシェなどに出店してきた経験は、いろんな人に会えて、人脈も一気に広がったのでよかったですね。
山本:マルシェで出会った人の中から、委託販売先が見つかったりすることもありますよね。「この人みたいにやってみよう」というきっかけになったりすることも多いです。
田中:山本さんのインスタとかをみていると、「東京の人が羨ましい」と思うこともあります(笑)忘年会などで親睦を深めているんですよね。
山本:東京のシェアキッチン利用者さんを集めて時々やっている忘年会ですね(笑)いつか宇部でもやりたいです!
田中:ぜひやってください。
山本:はい!今日はたくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました。




